意思決定と実行

キャリア開発 × 組織開発 × 新規事業開発

データから見る人材確保の取組みの効果

前回、急激な人口減少社会という環境変化が企業経営にどのような影響を与えているかを見てきました。

今回は、このような環境変化に対して多くの企業が、どのような対策や人材確保の取組みを行っているのか?

そして、その対策や人材確保の取組みは適切なのか?効果を発揮しているのか?を見ていきます。

 

 

人手不足への対策

前回と同様に、日本商工会議所と東京商工会議所が2023年9月28日に公表した「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」の調査結果を見ると、企業の対策は以下のようになっています。

『人手不足への対策』

人手不足への対策としては、最も多いのが「正社員の採用活動強化」(68.5%)、次に多いのが「パートタイマーなどの有期雇用社員の採用活動の強化(34.0%)です。

「有期雇用契約社員の採用活動の強化」の2倍近く「正社員の採用活動強化」を行っていることから、人手不足が慢性化していることが読み取れます。

これらの次に「業務プロセスの見直しによる業務効率化」(33.2%)、社員の能力開発による生産性の向上」(28.9%)、「IT化等の設備投資による生産性の向上」(25.2%)となっています。通常、人を増やす前に業務の効率化*1やIT化の検討・実施を行いますが、それでは間に合わないくらい人手不足が進んでいることが読み取れます。

また、戦略的な「外注化」ではなく、人手不足を早急に補うために行うための「外注の拡大」が4番目にきています。これも人手不足の深刻さを物語っています。何故なら、人手不足を早急に補うために行うための「外注の拡大」は、定性的には自社に強みを蓄積できなくなり競争力が低下ししますし、定量的には粗利率が低下し、収益性の低下へと繋がります。

人材確保(採用拡大、離職防止)の取組み

「正社員の採用活動強化」が対策の1番に来るほど深刻化している人手不足に対し、人手を確保するために企業が行っている施策は以下のようになっています。

『人材確保(採用拡大、離職防止)の取組』

人材確保に向けた企業の取組としては、「賃上げの実施、募集賃金の引上げ」(72.5%)が最も多く、「ワークライフバランスの推進(残業時間の削減等)」(38.1%)が続いています。

人手確保の取組みの本当の問題

ここで見て欲しいのが、厚生労働省の「令和4年度雇用動向調査結果の概要」です。

『前職を辞めた理由』 厚生労働省「令和4年度雇用動向調査結果」より筆者作成

男女ともに、前職を辞めた理由のトップは「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」であり、3位に「給料等収入が少なかった」がきています。

先ほどの企業の人材確保の取組みのトップが「賃上げの実施、募集賃金 の引き上げ」(72.5%)であり、2位が 「ワークライフバランスの推進」(38.1%)であることを考えると、退職理由の1位と3位への施策は実行されており、ある程度の対応ができていると思います。*2

しかしながら、退職理由の2位である「職場の人間関係が好ましくなかった」への施策はありません。

また、効果の持続性が高い内発的動機づけや動機づけ要因となる「仕事の内容に興味を持てなかった」、「能力・個性・資格を活かせなかった」への施策は少なく、あまり重要視されていません。

動機付け要因*3は、あればあるほど仕事に対して前向きになることができ、加えて「達成すること」「成果をあげること」「評価されること」「責任を果たすこと」「昇進すること」「成長すること」への意欲が高まる要因です。

これらの意欲を高めることなく、「社員の賃金を上げ、募集賃金を引上げ」(72.5%)、「ワークライフバランスの推進(残業時間の削減等)」(38.1%)を行った場合、その企業はどうなるでしょうか?

さらに、その存続が危うくなることは容易に想像がつきます。

~ つづく ~

*1:例えば、ECRS、すなわち業務の「排除・結合・交換・簡素化」

*2:ただし、これらは、いわゆる外発的動機づけであり、衛生要因でへの対応です。つまり、一般的には、効果が長続きしない動機づけであり、要因への対応です。

*3:アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグの2要因理論において、仕事をするうえで社員には満足度を高めることができる動機づけ要因と、不満足を低下させる衛生要因の2つがあり、その2つの要因をしっかりと把握して、満足している部分を増やし、不満足な部分を減らすことの重要性を説いています。