理論と実践

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衰退市場における事業戦略

衰退市場とは、業界全体の売上規模が将来継続的に衰退していくことであろうとされる産業、もしくは継続的な衰退がはじまっている産業です。

衰退市場において、事業を行っている企業は、機会よりも多くの脅威に晒されています。

衰退市場は、事業を行う市場として魅力がないため、参入すべき市場ではなく、撤退すべき市場だと考えられることが多いと思います。

これは本当でしょうか?

特に、中堅・中小規模の企業にとって、撤退戦略*1が正しいのでしょうか?

 

 

衰退市場以外は、ほとんどレッドオーシャン

衰退市場は、機会よりも脅威が多く、継続的に収益をあげることが難しい市場です。

だからと言って、衰退市場から撤退し、どのような市場に行くのでしょうか?

多くの企業が衰退市場から撤退し、成長市場に参入するという戦略は、自らレッドオーシャンに飛び込むようなものであり、多くの場合、相対的に経営資源の少ない中堅・中小規模の規模の企業が選択すべき適切な戦略とはならないでしょう。 

そもそも衰退市場からの事業転換自体が簡単ではありません。

いつかは衰退市場

市場を製品・サービス単位まで細分化していけば、ほとんどの市場は、いずれ衰退市場に向かいます。何故なら、環境の変化を避けることはできず、環境の変化により顧客ニーズが変化し、市場はその役目を終えます。

以下の市場は、現在、衰退市場と考えられています。

印刷
百貨店・デパート
新聞
ブライダルウェディング
出版
繊維
テレビ(放送・マスコミ)
音楽
アパレル
銀行
保険・金融

このような衰退市場と考えられる市場は、年々増えていきます。何故なら、日本は、2008年から総人口が、1995年から生産年齢人口が減少に転じており、人口減少社会だからです。日本市場全体が衰退市場へと向かっているからです。

そのため、衰退市場における事業戦略、生き残りのための戦略は、ほとんどの企業にとって重要な戦略になります。

では、衰退市場において、どのような戦略をとることが望ましいのでしょうか。

衰退市場における生き残り戦略

衰退市場における事業戦略としては、一般的に次の4つ戦略があるとされています。*2

  1. 早期撤退戦略
  2. 収穫戦略
  3. リーダーシップ戦略
  4. ニッチ戦略

 1.の早期撤退戦略と2.の収穫戦略は、広い意味でいずれも撤退戦略であり、生き残り戦略ではありません。

3.リーダーシップ戦略は、衰退市場でシェアNo.1を目指す戦略で、もともとシェアの高い大企業向けの戦略です。社内の事業を成長させるよりも、M&Aにより競合企業を買収して、競合企業の製品・サービスラインを獲得した後に、その製品・サービスライン又は不採算の製品・サービスラインを縮小して利益率を高めます。

3.ニッチ戦略は、これまで以上にニッチを目指すものであり、市場全体が衰退しても、絞り込んだ領域で収益を確保する方法であり、中堅・中小規模向けの生き残り戦略です。

具体的に、どのようにニッチ戦略を進めるのか?というと、次のような要素を考慮して戦略を決定します。

  1. 自社を存続させられるだけのニッチ市場があるか。
  2. 大企業では採算が取れない小口案件、小規模案件が多数あるか。
  3. 既存顧客に小口案件、小規模案件が多数あり、既存顧客との接点を多数持つことができるか。
  4. 小口案件、小規模案件を積み上げることにより、既存顧客の大口案件を獲得できるか。
  5. リーダーシップ戦略を採用する大企業が、その企業規模を維持することができないほどに市場規模が小さくなってきているか、又は上場企業は、株主から圧力が強く、撤退せざるを得ない状況か。

大企業が撤退していく衰退市場には、中堅・中小企業の活路があります。

*1:ここでいう撤退戦略には、①即時撤退戦略と②収穫戦略(投資回収後撤退戦略)の両方を含むます。

*2:HARRIGAN, K. R. (1980a): Strategies for Declining Business , Lexington,Massachusetts : Lexington Books. (1980b): “Strategy Formulation in Declining Industries,” Academy
of Management Review, 5, 599-604.
HARRIGAN, K. R. AND M. E. PORTER (1983): “End-Game Strategies for Declining Industries,” Harvard Bussiness Review, 64, 111-120.