情と理のシンセシス

SYNTHESIS OF HUMANITY & THEORY.

どんぶり勘定だからこそ、あなたの会社はこれから伸びる!/立石博明

本書は、「お父ちゃん(おかあちゃん)が社長、お母ちゃん(お父ちゃん)が専務という名の経理(営業)」といった、いわゆる小規模企業経営者*1向けに、まずは年収1,000万円を実現するための本です。

どんぶり勘定とは、小規模企業が容易に改善できるポイントの一つであり、容易に改善できるポイントがたくさんある小規模企業は、見方は変えれば、それだけ成長の余地が大きい、というのが本書で著者の立石博明さんが伝えたいことです。

 

 

 

1.著者

著者の立石博明さんは、元アテーナホテルズ株式会社の代表取締役で、現在は株式会社アテーナソリューションの代表取締役として、事業承継・事業再生のコンサルタントです。

淡路島のホテル経営者として、阪神淡路大震災を経験し、その後リーマンショックを経験します。そのときの体験談は、新型コロナウイルス感染症が拡大している現在においても小規模企業経営のヒントになると思います。

2.父ちゃん母ちゃん企業が持つ無限大の伸び代

父ちゃん母ちゃん企業は、みなどんぶり勘定だそうです。

本書では、こんな問題がだされます。

個人経営の焼き鳥屋で、いちばん数字が合わないのは何でしょうか?

答えは、「ビール」です。

では、次の問題です。

なぜ焼き鳥屋では、ビールの数字が合わないのでしょうか?

答えは、「店主の親父が飲んでいるから」です。

ビール片手に焼き鳥を焼く。お客さんがはけた後、一杯ひっかけながら片づけをして帰る。こんなとき、自分で飲んだビールは伝票に記入しません。するわけがない、どんぶり勘定が当たり前だと著者の立石さんは言います。

これを聞いて、「酷い経営だな」と感じるか、「これで、今、生き残っているのであれば、凄いことだな!この企業の伸びしろはどれくらいあるのだろう?!」と感じるか。

立石さんは、後者のように感じると言います。

改善ポイントの多い企業にであったら、この企業の成長の伸び代は大きいと、わくわくするコンサルタントになりたいものです。

3.”メシの種”を探せ!

立石さんが淡路島でホテル経営をしていたときに、阪神淡路大震災が起こります。

父親から事業承継した際に引き継いだ借金が6,000万円、これに加えて、自ら1億4,000万円の融資を受け、旅館のとなりにホテルを建てていました。

「ふくれてしまった借金」

「売り上げはないのに、毎月発生する支払い」

「母親の『終戦直後よりマシだ』の言葉」

コロナ禍の現在にも通じるところがありますね。

このとき、立石さんは、あらゆる経営の本を読みあさったそうです。そして分かったことは、たいていの経営の本には、「強みを活かして、強みを伸ばす」と書いてあること

です。特に、「SWOT分析」を紹介する本でよく書かれています。

しかし、どんなに考えても、そのときは、強みが分からなかったそうです。

弱みならはっきり答えらる「金が足らん。客が来ん。人がおらん」悩みはこれにつきるそうです。

「何や。強みって何や。わからん・・・。何を伸ばせばええんや・・・」

頭を抱えている毎日を送っているうち、ふとある言葉が頭に浮かんできたそうです。

強みといった抽象的なものではなく、もっと具体的でシンプルに、

「オレのとこの”メシの種”って何やろ?」

「誰に、何を売って、どんなサービスで自分はメシを食えているんか?」

自分に問いかけることで答えが見つかったそうです。

 

これは分かります。実際、コンサルの現場でも、いきなりSWOT分析をするのは難しいケースがあります。

エイベルの3次元事業(ドメイン)定義を使ったフレームワーク分析を先に行った方が有益な場合が多いです。

4.「年収1,000万円が経営目標」

経営を指南する本には、「経営計画をつくりましょう」「中期経営計画をつくりましょう」と書かれていたりします。確かに、ゴールを決めて、そのゴールから逆算することは大切ですが、父ちゃん母ちゃん企業(=小規模企業企業)にとって、5年後のゴールや売上を考えましょうとか、自社の経営分析をしましょうと言っても、やったことがないので、困ってしまうことが多いそうです。

そこで、立石さんは、まずは「ゴールを年収1,000万円に定めること」をお勧めしています。年収1,000万円をゴールにして、ここから逆算して経営計画を立てることをお勧めしています。

具体的には、年収1,000万円ということは月給84万円となます。月刊の売上額から月刊の支出額をマイナスして、5年後に84万円になる計画を立てます。現在が月給が20万円だとすると、5年後の目標月給84万円との差額は64万円であり、5年すなわち60か月でこの差を埋めようとすると、毎月1万円ずつ月給を上げていくと、64か月後には月給84万円となり、およそ5年で年収1,000万円を達成することができます。

毎月1万円ずつ月給をあげるという目標であれば、なんとなく実現できそうな数字ですよね。*2

  1. 大切なことは、毎月、月末が来たら必ず数字を確認すること。
  2. 月間目標に対して、達成したのか、達成できなかったのか確認すること。
  3. どこが上手くって、どこがうまくいかなかったのか、毎月、その原因を検証すること。
 『経営とは、毎月毎月この作業を12回繰り返すこと。』

 

5.まとめ

「売上額とそれに対する利益の表を事業毎や製品・サービス毎に作成する。」

「経営改善は、”とりあえず”掃除からはじめる。」

 

企業には、様々な大きさがあります。大企業、中堅企業、中小企業、小規模企業、零細企業、そして個人事業主

業界において置かれている立場も違えば、企業の成長段階も違います。

これらに応じて経営の仕方も、取り組むべき課題も変わる。

そして、改善ポイントが多い企業ほど、量的にも質的にも成長の伸びしろは大きく、経営者と共に会社を成長させることにワクワクするコンサルタントが良いコンサルタントなのだと思いました。

 

<評価> ☆☆☆☆

個人事業主、小規模企業の経営者向け、支援者向けの本として。

 

*1:下町ロケットに登場する佃製作所を中小企業ではなく大企業だと感じる経営者向けの書籍です。

*2:もちろん、実際は、そんな簡単なことではない場合もあります。特に、年が進むにつれて厳しく感じることもあると思います。