理論と実践

知の創造と智慧の実践プロセス

経営理念Case22 有限会社藤井牧場

【経営理念】

開拓者たれ

 

【会社概要】

創業/1904年(明治37年/初代が10Haの土地を購入、農場を興す)
業種/酪農業
資本金/1,020万円
従業員数/35名
本社所在地/北海道富良野市
代表取締役社長/藤井雄一郎(5代目・2011年就任)
URL/http://www.fujii-bokujo.com/index.html

 

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経営理念

開拓者たれ
常に未来志向で最先端のものを取り込んでいく精神を持ち続ける

ミッション

酪農と地域資源の開拓によって社会に貢献すること 

ビジョン

2030年『富良野未来開拓村』

①オンリーワン牛乳を開発していく開発ラボをつくる。
②社員の住む場所や夢を実現する場所をつくる。
③地域交流の場として存在する。

バリュー

私たちは、酪農と地域資源が持つ、限りない可能性を追及します。
私たちは、顧客と一体となって、オンリーワン牛乳を開発します。
私たちは、活発な人材交流を通じて、科学的、文化的、人間的に成長し、真に豊かな生活と充実した人生を実現します。


分析

1.どのように社会に貢献するのか

現状に満足することなく、常に未来志向、あらゆる可能性に挑戦する酪農と地域資源の開拓によって社会に貢献しようとしており、事業を通じてどのように社会に貢献するかが明確です。

2.未来のあるべき姿、進むべき方向性

①オンリーワン牛乳を開発していく開発ラボをつくる。
②社員の住む場所や夢を実現する場所をつくる。
③地域交流の場として存在する。

上記を手段として、育児や介護といった人生を全うする上で、欠かせない機能を果たし、より楽しく、誇り高く、自分がなれる最高を自分目指して、開拓の同志たちが切磋琢磨し科学的、文化的、人間的に成長できる場所である富良野未来開拓村を2030年までに設立するというビジョンは、手段と目的が明確であり、あるべき姿、進むべき方向性が具体的かつ明確で達成期限が定められており、ビジョンとして優れています。

3. 戦略・戦術のヒント

開拓者たれ 「常に未来志向で最先端のものを取り込んでいく精神を持ち続ける」

六次産業化への挑戦はもちろんのこと、コンピュータ管理と遺伝子解析により、チーズケーキに合う牛乳、プリンをつくるのに合う牛乳など用途に特化した牛乳、ビジョンにあるオンリーワン牛乳の開発など、様々な事業戦略・戦術のヒントが見えてきます。

藤井雄一郎社長のことば

「現状に満足することなく、理想のライフワークスタイルを確立させる集団になる」
 「開拓する場は無数にある。いまだに底を見せない酪農技術のさらなる開拓、メーカー様と共同して作り出すオンリーワン牛乳の開拓、インバウンド需要に脚光を浴びる地域資源の開拓、そして何よりも、一番の開拓資源はわたしたち自身の可能性です。人間の能力はどこまでも限りなく伸び続けます。」
「開拓の事業は100年後に残るもの。自分の代では達成し得ないかもしれないが、孫子のために努力をしているんだ」*1
「規模や売上、利益を求めるのではなく、我々の目的は開拓によって社会に貢献すること」
「付加価値を持たせた『選ばれる牛乳』をつくっていかない限り、食べていけなくなる」
「『人間は牛の邪魔をするな。邪魔をするから、牛本来の能力を発揮できないんだ。とにかく環境をよくしろ』*2と言われ、その言葉をずっと持ち続けていましたが、サンドベッドを見たときに、まさにこのことだと思いました。」
「失敗は多かったのですが、いろんなことを学びました。『餅は餅屋』という言葉がありますが、当社にできるのは生乳の生産です。そこから先の加工や販売は、提携させていただいているチーズケーキのリクローさんや、セブン-イレブンさんと協業させていただく。これが一番好ましい取り組みですし、消費者の方にも一番メリットがあると気づきました。」
「牧場長を育てるというのは、ある種、会社が求めてきた夢です。しかし、社員さん側に立って、社員さんが持つ夢って何なのかと考えたとき、『会社についてこい』だけではどこかで疲れてしまう感じがしたんです。」
「社員さん一人ひとりの夢と、会社の夢がかさなるところをつくろうと、新たなビジョンを作りました。」

新しい技術の開発や取り組み、ビジネスモデル、マネジメントモデルなど、酪農業界として全国初の事例にいくつも取り組み、農場HACCP認証取得、サンドセパレーターの導入、BCPの取り組み、成長支援制度などを導入しています。

強みと10年構想の方向性

強みは、開拓者精神に基づく構想力とやり遂げる力(グリット)です。

牧場を襲った2つの危機を乗り越え、ただ乗り越えるだけではなく、伝染病対策と借金の返済*3を行うことで、農場HACCP認証を取得し、サンドセパレター装置を購入して砂は敷料、糞尿は堆肥として再利用する循環型の仕組みを構築*4します。

2030年のビジョンである富良野未来開拓村は、育児や介護といった人生を全うする上で、欠かせない機能を果たし、より楽しく、誇り高く、自分がなれる最高を自分目指して、開拓の同志たちが切磋琢磨し科学的、文化的、人間的に成長できる場所です。きっとこの構想も持ち前の開拓者精神でやり遂げることでしょう。

10年構想の方向性は、①次の100年に向けての基盤(富良野未来開拓村)づくり、②新商品開発、③新市場開拓です。

『理念と経営 2020年 11 月号』より

*1:藤井牧場初代・藤井喜一郎

*2:酪農家フィル・ヘルフター

*3:近隣農場の保証人として約14億円の負債を抱えた。

*4:売上高約4億円のときに、2億円の投資をしています。