情と理のシンセシス

SYNTHESIS OF HUMANITY & THEORY.

経営理念について②

中小規模の企業にとって、経営理念はとても大事です。

何故、中小規模の企業にとって経営理念が大事なのか?

その理由を、「環境の変化」「働く人々の価値観の変化」「中小規模の企業の最も重要な経営資源」の3つの観点から説明します。

 

 

経営理念なんていらない

「理念で飯(メシ)が食えるか!」

「創ってもムダ。役に立たない。」

「使えない(使われない・・・)。」

 

「経営理念は重要です。」というと、歴戦の経営者の方から、こんな声が聞こえてきそうです。

経営理念だけでなく、経営戦略、事業戦略、事業計画についても同じことを言われそうです。

 

結論から言えば、経営理念、経営戦略、事業戦略、事業計画、全て必要なものです。

 

どうして必要なのか、どのように使うのか、まずは、このお話からはじめたいと思います。

 

ある時、ハンガリー軍の偵察部隊がアルプス山脈の雪山で、猛吹雪に見舞われ遭難した。彼らは吹雪の中でなす術なく、テントの中で死の恐怖におののいていた。

その時偶然にも、隊員の一人がポケットから地図を見つけた。彼らは地図を見て落ち着きを取り戻し、「これで帰れるはずだ」と下山を決意する。彼らはテントを飛び出し、猛吹雪の中、地図を手におおまかの方向を見極めながら進んだ。そしてついに、無事に雪山を下りることに成功したのだ。

しかし、そこで戻ってきた隊員が握りしめていた地図を取り上げた上官は、驚いた。

彼らの見ていた地図はアルプス山脈の地図はアルプス山脈の地図ではなく、ピレネー山脈の地図だった。*1

 

さて、このお話を聞いて皆さんはどう思いましたか?

 

「地図が成功の要因かは分からない。」

「無意味な地図で生還できたという極めて偶然性の高い例外的な成功事例を挙げて、経営理念や戦略等の有用性を肯定することは間違っている。」

確かに、そうかもしれません。

 

「生きて帰ろう」というこころからの想いを「経営理念」に、「地図」を「経営戦略」に置き換えて、猛吹雪という激しい環境の変化に遭遇した部隊(組織)にどのようなことが起きたのか?

 

このお話からどのような気づきが得られるか考えてみたいと思います。

 

環境の変化

激しい天候の変化により「猛吹雪」という環境下に部隊が置かれたのは、まさに新型コロナウイルス感染症の拡大という「環境の変化」により、厳しい経営環境下に企業が置かれたのと同じでます。

このとき「地図」に相当する「経営戦略」や「事業戦略」がなかったり、「生きて帰ろう」というこころからの想いに相当する「経営理念」が無かったとしたらどうなるでしょうか。

倒産やそれに伴う生活の不安、場合によっては、死が頭をよぎりるかもしれませんが、なす術はなく、ただただ新型コロナウイルス感染症が収まるのを待つしかない、ということになりそうです。

逆に、むやみに動き回るかもしれません。そして、会社の死、すなわち倒産を早めることになるかもしれません。

こんなとき、自らの拠りどころとなる、経営の原点となる「経営理念」や「経営戦略」があったなら、どうでしょうか。

 

すべきこととすべきでないことが決まる。少なくとも、その判断や決断の拠りどころがあり、判断や決断がしやすくなります。

 

「経営理念」に、果たすべき使命(ミッション)と使命(ミッション)を果たした先にある長期的なビジョン、すなわち、こうありたい、こうあるべきだという創業者や経営者の人生観や人間観に基づく根本の考えが明確に表現されていたなら、それは、創業者や経営者が、人生を賭けて実現したいことであり、この会社は何のためにあるのか?今、私たちは何をすべきか?という問いに答えることができるものになります。

 

「経営理念」に立ち返ることで、冷静さを取り戻し、今ここですべき判断や決断ができるようになります。

「経営理念」に基づいた判断や決断は、経営者自身にとっても、納得感のある、腹落ちしたものであり、その判断や決断には、夢や希望があるはずです。*2

夢や希望が見えれば、自らが活性化し、困難に立ち向かう勇気が湧いてきます。

勇気が湧けば、行動することができ、行動した結果に対して、良い諦め、これから自身に起こる出来事を受け止め、受容することができる気持ちの余裕も生まれます。

勇気が湧くと同時に、気持ちの余裕ができれば、現状を打開する良い戦略を構築することができます。

この一連の心理的な変化を引き起こす起点となるのが「経営理念」であり、「経営理念」が必要となる重要な理由の一つです。

 

世界標準の経営理論

世界標準の経営理論

世界標準の経営理論

 

 

~ つづく ~

 

次回

働く人々の価値観の変化 

中小規模の企業の経営資源 

まとめ

*1:Weick, K. E. 2005 "Managing the Unexpected: Complexity as Distributed Sensemaking," In R. R. McDaniel Jr. and D. J. Driebe(Eds.), Uncertainty and Surpraise in Complex Systems: Questions on Working with the Unexpected(pp.51-65), Springer-Verlag.

*2:創業者や経営者自身のセンスメイキングです。