情と理のシンセシス

SYNTHESIS OF HUMANITY & THEORY.

令和元年意匠法改正特設サイトと令和元年意匠法改正①

2020年4月1日から、令和元年改正意匠法が施行されました。

特許権著作権、商標権に比べると、これまで出願数も少なく、あまり活用もされていない知的財産権ですが、今回の改正により意匠権による保護対象が拡充し、これまで意匠権を気にする必要がなかった企業や個人にも影響がある改正が行われました。

令和元年意匠法改正は、意匠法を根幹から変える大改正にもかかわらず、教科書的な書籍がなく、まとまった情報が不足しています。

そのような状況において、特許庁「令和元年意匠法改正特設サイト」を開設し、有益な情報を一元的に発信しています。

そこから見えてくるキーワードは、「画像デザイン」「建築物」「内装」の3つです。

今日は、令和元年改正意匠法の施行により、新たにどのような業種や企業活動に影響がでる可能性があるのか、中小企業経営者向けにお話したいと思います。

 

 

何故、意匠法の大改正が行われたのか?

結論からいうと、デザインの生み出す付加価値に注目し、これを「イノベーション」やブランド構築」の源泉として活用できるようにするためです。

特許庁経済産業省は、平成29年(2017年)7月に「産業競争力とデザインを考える研究会」を立ち上げ、平成30年(2018年)5月に「デザイン経営宣言」を取りまとめ、公表しました。

 

「デザイン経営宣言」の問題意識は以下のとおりです。

第四次産業⾰命により、あらゆる産業が新技術の荒波を受け、従来の常識や経験が通⽤しない⼤変⾰を迎えようとしている。そこで⽣き残るためには、顧客に真に必要とされる存在に⽣まれ変わらなければならない。

そのような中、規模の⼤⼩を問わず、世界の有⼒企業が戦略の中⼼に据えているのがデザインである。

⼀⽅、⽇本では経営者がデザインを有効な経営⼿段と認識しておらず、グローバル競争環境での弱みとなっている。

 

そのうえで、次のような考え方を打ち出します。

 

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デザイン経営の効果=

ブランド構築に資するデザイン+イノベーションに資するデザイン

=企業競争力の向上

 

イノベーションとは、単に新たな技術等を発明するだけでなく、発明を実用化し、その結果として社会を変えることが必要です。

革新的な技術を開発するだけでイノベーションが起こるのではなく、社会のニーズを利用者視点で見極め、新しい価値に結び付けること、すなわちデザインが介在することで、はじめてイノベーションが実現します。

 

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このプロセスを知的財産の観点から捉え直すと、ダイソンやアップルなどの企業は、特許出願が増えた後に意匠登録が増えるのに対し、日本企業の多くは、特許出願の増加後に意匠登録が増えることがありません。1980年代に盛んだった意匠登録は、1990年代以降は低迷しています。

その理由の一つとして、諸外国では意匠権で保護されるデザインが日本の意匠法では保護されないということがあると考え、令和元年改正意匠法により保護対象を広げることになりました。

 

これまでと何が大きく違うのか?

結論からいうと、新たに「画像デザイン」の保護範囲を広げるとともに、「建築物」「内装」が意匠権の保護対象となりました。

改正前の意匠法の保護対象は、「物品」であることが必要であり、「①物品の②形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、③視覚を通じて美感を起こさせるもの」と定義されていました。
「物品」とは、形があるもの(有体物)のうち市場で流通する動産、と解されており、不動産やアイコンなどは「物品」ではないとして、意匠法の保護対象ではありませんでした。

そのため「画像デザイン」の保護は限定的であり、「建築物」や「内装」は保護対象ではありませんでした。

令和元年改正意匠法の施行により、どのように保護対象が拡大されたか、具体的に見ていきます。

 

「画像デザイン」

前述のとおり、令和元年改正前の意匠法においても、一部の画像デザインは意匠法で保護されていました。
例えば、デジタルカメラを操作するための画像は、デジタルカメラという物品に記録され、かつ当該物品に表示されたものであり、このような画像は、物品の部分の形状、模様若しくは色彩又はそれらの結合である認められ、意匠登録されています。
また、スマートフォンにインストールされたアプリの画像も、スマートフォンに記録され、表示されたものであり、やはり物品の部分の形状等として認められ、意匠登録されています。

 

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しかしながら、以下のようなデザインは、物品の形状や模様等と認められず、改正前の意匠法では保護されていませんでした。

 

  1. サーバーに記録され、ユーザーが利用するたびにネットワークを通じて送信される画像
  2. 物品以外の場所に投影される画像

 

2.の具体例としては、次のようなものがあります。*1

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(出典)ソニー株式会社HP

 

上記1. 2. を保護対象とする令和元年意匠法改正により、具体的には以下のように「画像デザイン」の保護対象が広がりました。

 

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ただし、改正後に保護される画像は、機器の操作の用に供される画像及び機器がその機能を発揮した結果として表示される画像、いわゆるGUI(Graphical User Interface)に限られます。

 

これにより、GUIを利用するWebサイト画像やアプリ画像なども意匠権による保護対象となる可能性があるため、業種・業界を問わず令和元年改正意匠法への対応が必要になります。

 

~ つづく ~

*1:Any Surface/壁に投影されるユーザーインターフェースで、操作が必要になると自動で表示され、必要な操作が終了すると自動で消えます。