情と理のシンセシス

SYNTHESIS OF HUMANITY & THEORY.

ラインとスタッフ

ある程度の規模の会社に勤めると、大きく事業部門と管理部門に組織が分かれます。

組織として分かれている以上、通常は、それぞれの役割や機能は異なります。

ただ、その役割や機能の違いを理解していないと、仕事をしていくにつれて、それぞれの組織の考え方やスタンスの違いに違和感を持つことがあります。

 

違和感程度なら未だ良いのですが、お互いに他部門の機能や役割に対する無理解から、協力し合い効率的に仕事を進めていくことができなくなるのは問題です。

「稼いでいるのは私たちだ。」

「会社を支えているのは私たちだ。」

なんて気持ちを他部門に対して抱いているとしたら、精神衛生上も良くありません。

お互いがお互いを理解し尊重して、協力的・効率的に仕事を進められるように、まずは事業部門と管理部門に組織が分かれる理由や意義を理解する必要があります。

 

「職能(機能)」

経営学の組織構造論に、「職能」という言葉があります。

職能とは、「なされるべき仕事」を意味し、「標準的な能力によってなされる仕事の種類と量」と定義されます*1

 

経営学入門[上](第2版) (日経文庫)

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  • 作者:榊原 清則
  • 発売日: 2013/04/16
  • メディア: 新書

 

 

"Function" の訳語として「職能」が使われてきましたが、最近では、「機能」という訳語を使うこともあります。

人事管理の分野においても、「職能」という言葉が使われており、そこでは「従事している仕事から離れた職務遂行能力」の意味で使われているため*2、これと区別する必要もあったと思います。

 

人事管理入門 (日経文庫)

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「ライン」と「スタッフ」

この「職能」または「機能」には、ラインとスタッフの2種類があります。

「ライン」とは、組織目標の達成に直接的に関わる業務または部門であり、 「スタッフ」とは、組織目標の達成に間接的に関わる業務または部門です*3

「ライン」と「スタッフ」の区別は、もともと軍隊の組織に由来しています。

「ライン部隊」は実際に戦闘をする部隊のことです。

「スタッフ」はさらに「スタッフ部隊」と「ゼネラルスタッフ」に分けられ、「スタッフ部隊」は、「ライン部隊」による戦闘行為を補助する間接的戦闘部門であり、「ゼネラルスタッフ」は、指揮官を援助する人や機関で、指揮官の知識の範囲を拡大する職能を持つ部門になります*4

したがって、「スタッフ」の業務は、情報・データの収集、分析、助言・指導であり、指揮・命令の権限を持ちません。

権限がない以上、権限に伴う責任もないことになります。

 

事業部門「ライン」と管理部門「スタッフ」

さて、これを会社組織にあてはめると、事業部門が「ライン」で、管理部門が「スタッフ」になります。

ビジネスにおける戦場とは市場であり、市場において取引を行うのがラインである事業部門となり、その事業部門に対して、情報・データの収集、分析、助言・指導という形でビジネスを支援するのがスタッフである管理部門となります。

ラインである事業部門は、ラインへの指揮命令の権限があり、意思決定が権限と責任があります。

他方、スタッフである管理部門は、ラインへの指揮命令の権限もなければ、ラインの意思決定への権限も責任もありません。

従って、事業部門が管理部門に、「あいつらは決めない。無責任なやつらだ!」と憤ってみたり、逆に管理部門が事業部門に、「こちらの言うことも聞かずに、あいつら勝手に決めやがって!」と憤ってみたところで、その憤りや批判は、ラインとスタッフの役割や機能からみると的外れな憤りや批判であり、組織論に対する無知をさらけ出すことになるだけです。

もちろん、言いたくなる気持ちは分かります。

そもそも、管理部門の支援を受けずに勝手に意思決定し実行する事業部門というのは、組織の役割分担を理解しておらず、適切な意思決定過程(プロセス)を経ていないわけですから、意思決定の質は下がりますし、事業部門から支援を要請されない管理部門は、自らの情報・データの収集、分析、助言・指導能力について検証し、自己の存在意義を再考する必要があることは言うまでもありません。

これは、ラインの意思決定の責任を管理部門に負わせることができないことや、スタッフである管理部門がラインに代わって意思決定できないということとは別の話です。

事業部門と管理部門は、効果的に業務を行うために分化した組織であり、それぞれの役割と機能を十分に理解して、お互いお互いの組織を尊重して、協力的で効果的な組織を築き上げていくことが大切です。

知識を身につけ、お互いを理解するだけで、不要なストレスや葛藤(コンフリクト)を減少させることができ、精神衛生の改善とともに、働きやすい職場が生まれます。