情と理のシンセシス

SYNTHESIS OF HUMANITY & THEORY.

良い経営理念について

中小企業経営者の支援をしていて、つくづく「経営理念」は大事だなと思います。

 

「経営理念」「企業理念」「信条」「クレド」「社是」「ビジョン」「ミッション」等、本来は、それぞれ微妙に定義が異なりますが、そのような細かな違いは無視して、ここでは「会社が大切にしている想い」のようなものの総称として「経営理念」と言います。

 

「経営理念」は、単なるお題目ではなく、ステップを踏んで創り、社内に浸透させていくと、様々な場面で本当に役に立ちます。

様々な場面で役に立つ良い経営理念とはどのようなものでしょうか。

 

良い経営理念かどうかは、次の5つの評価基準で判断できます。

1. 未来のあるべき姿、進むべき方向性を示していること

2. どのように社会に貢献するか明確であること

3. 戦略・戦術のヒントが見えてくること

4. 迷ったときの判断基準・行動基準になること

5. インパクトがあり、覚えやすいこと

以下、少し詳しく見ていきたいと思います。

 

 

1. 未来のあるべき姿、進むべき方向性を示していること

ビジョン(未来像・将来像)に相当するものです。ある時点までに「こうなっていたい姿」と言っても良いと思います。中長期的な未来像・将来像の場合、経営理念に相当します。従って、短期的な目標から中長期的な目的までを含むものであり、変化し、進化・深化するものです。

社長はもちろんのこと、そこで働くすべての人が未来のあるべき姿、進むべき方向性を共有できている組織は、前向きな希望を持った組織であり、困難な場面でも組織として物事に取り組めます。

 

2. どのように社会に貢献するか明確であること

ミッション(使命)に相当するものです。①どのような社会を実現するために、②どのような事業領域でビジネスをするのか?と言っても良いと思います。

会社のミッションとそこで働く人の個人的なミッションが一致していると、モラル(士気)とモチベーション(やる気)を高く維持した状態で仕事に取り組めるため、高い成果が得られる可能性が高まります。

 

3. 戦略・戦術のヒントが見えてくること

ミッションを、どのように積み重ねて、ビジョンを実現するのか、その実現手段に相当するものです。実現手段そのものが分かり易い場合は多くないと思いますので、実現手段のヒント見えてくるかどうかがポイントです。

次の「4. 迷ったときの判断基準・行動基準になること」に似ていますが、どちらかというと平常時の行動基準と理解してもらえると良いです。

 

4. 迷ったときの判断基準・行動基準になること

バリュー(価値観)に相当するものです。現在の新型コロナウイルス感染症の拡大など大きな環境の変化や想定外の出来事が生じ判断に迷う場合の判断や行動の基準となるもので、どちらかというと非常時の判断基準・行動基準と理解してもらえると良いです。

 

5. インパクトがあり、覚えやすいこと

経営理念は、社長だけでなく、そこで働く多くの社員が、日々の仕事のなかで活用すべきものです。

従って、インパクトがあり、覚えやすく、繰り返し活用することで、無意識のうちに経営理念に沿った判断や行動ができるようになるものがよいです。

 

経営理念はどのように役に立つのか

1~5の要素を満たす良い経営理念は、次のような効果が期待できます。

 

①経営の軸となって、困難な状況に陥ったとき、判断に迷うときに立ち戻ることができるため、迅速でブレの少ない意思決定ができます。また、新規事業開発やイノベーションの起点となって、新たな価値を創造し、顧客に提供できるようになります。

②組織の軸となって、個々の社員が自律的に判断し、行動できるため、強い組織となります。また、経営理念は社会的な意義があるため、社会に役立つ仕事をしているという誇りが社員の中に生まれ、仕事の意欲が向上します。

③信頼の軸となって、どのような事業を行うことにより、どのような価値のある社会を実現し、貢献しようとしているのかという企業の想いやミッションを伝えることができるため、経営理念に共感する人からの信頼を得ることや企業の価値観に共感する優秀な人材を採用することを通じてミッション(使命)を遂行し、ビジョン(未来像・将来像)を実現できるようになります。

 

経営理念は、策定することが目的ではありません。経営ツールとしてしっかり活用することが必要です。

社内にしっかりと浸透させ、社外にきちんと発信することで、経営理念の存在意義が高まります。そのためには、社長の強い想いを起点にしていること、社員が参画して社員の想いも反映すること、判断基準や行動基準として活用できるように常に参照できるようにすること、必要に応じて内容を見直すことなどが必要です。

ピーター・ドラッカーは、「企業文化は戦略に勝る」と言っています。

良い経営理念とその実践は、良い社風、良い企業文化を形成し、極めて模倣が困難な価値ある経営資源になります。