情と理のシンセシス

SYNTHESIS OF HUMANITY & THEORY.

ビジネスと共感について

ビジネスにおいても、『共感』が重要だと言われています。ビジネスの文脈において、『共感』はどのような意味で使われているのでしょうか。

辞書的な意味の『共感』に近いのか、カウンセリングにおける『共感』に近いのか。それとも、これらとは異なる『共感』概念なのでしょうか。

 

デザイン思考における『共感』

スタンフォード大学のdスクールでは、デザイン思考のプロセスを5つステップで整理しています。*1

 

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このモデルは、『共感(Empathize)』から始まります。

共感 とは、デザイン課題の文脈において人々を理解する作業を意味します。
人々がどのように・なぜ行動するか、身体的・感情的なニーズは何か、世界をどのように考えているか、彼らにとって有意義なものとは何か・・・共感は人々を理解するための努力と言えます。*2

辞書的な意味での『共感』、つまり、「他人の意見や感情などにそのとおりだと感じること。また、その気持ち。」*3とは違う意味です。
 

『共感』するためには、「観察する」「関わる」「見て聞く」が必要とされていることを考えると、カウンセリングにおける『共感』に近いです。

 

また、デザインファームIDEOのCEO兼社長であるティム・ブラウンは、

『デザイン思考が世界を変える』において、次のように説明しています。

 

観察対象の人々と根本的なレベルでつながり合う必要がある。
これを私たちは「共感(エンパシー)」と呼んでいる。

 

やはり、カウンセリングにおける『共感』を踏まえた意味で『共感』を使用しているように思います。

 

共感経営における『共感』

一方、日本に目を向けると一橋大学名誉教授の野中郁次郎さんがビジネスにおける『共感』について研究をされています。

野中教授は、『共感経営  「物語り戦略」で輝く現場』において、次のように定義しています。

共感とは、「他社の感情や行為の意味を共有する精神機能」
 

また、「他者と文脈を共有すること」「人は、他者の動作、感情、知覚について、『自分が同じ状態を経験するのに用いる領域を使って』理解する。それは、自分と他者の違いを超えた主客一体の世界です。」とも言っていますので、どちらかというと辞書的な意味の『共感』的な発想です。

 

そして、人は共感すると利他的な行動をとるため、利他的な行動をとる集団は、より多くの成果をあげることができることから、経営において『共感』は、とても重要なものであるとしています。

人間関係の本質は共感にあり、人間力の本質は共感にある。

特に中小企業では「経営者にとって人間力は重要」と言われることが多いですが、それは、人間力の本質が『共感』にあり、『共感力』が高い経営者は利他的な行動をとるため、より多くの成果をあげ、会社を発展させることができるから、ということかもしれません。

共感経営 「物語り戦略」で輝く現場

共感経営 「物語り戦略」で輝く現場

 

*1:The five-stage Design Thinking model proposed by the Hasso-Plattner Institute of Design at Stanford (d.school).

*2:一般社団法人デザイン思考研究所「デザイン思考 5つのステップ」 / https://designthinking.eireneuniversity.org/index.php?dt_text

*3:デジタル大辞泉 / https://dictionary.goo.ne.jp/word/共感/#jn-55993