情と理のシンセシス

SYNTHESIS OF HUMANITY & THEORY.

共感について

日常生活においても、ビジネスにおいても、『共感』は重要だと言われています。

 

コミュニケーションにおける共感、カウンセリングにおける共感、イノベーションにおける共感など、様々な文脈において『共感』という言葉が使われています。

ある程度の共通認識のもとで『共感』という言葉が使われているかというと、そうではなく、それぞれ異なったニュアンスで使われています。

重要だと言われている『共感』には、どような意味や考え方があるでしょうか。 

『共感』の辞書的意味

辞書で『共感』を調べると、
他人の意見や感情などにそのとおりだと感じること。また、その気持ち。
とあります*1
例えば、コミュニケーションの場面において、相手の意見や感情と同じ意見や感情を自分自身も持ち、一緒に笑ったり、一緒に悲しんだり、一緒に泣いたりする。
多くの人は、このようなことを『共感』だと考え、自分の意見に賛成してくれたり、一緒に笑ったり、悲しみ、泣いてくれる人を『共感力』が高い人だと考えているのではないでしょうか。
 
ただ、自分の意見に賛成してくれたり、一緒に笑い、悲しみ、泣いてくれる人が、本当に、自分と同じ意見や感情を持っているかは、確かめようがありません*2
 

共感される側から見た『共感』

辞書的な意味の『共感』は、共感する側から見た『共感』です。これに対して、共感される側から『共感』を見ると、「この人だったら、きっと私を分かってくれる」「この人だったらきっと信頼できる」と感じられること、と考えることができます。
 
この考え方は、共感される側の感じた方の問題ですので、『共感力』がある人かどうかの判断は、極めて主観的なものではありますが、可能となります。
 
それでは、共感される側が、「この人だったら、きっと私を分かってくれる」「この人だったらきっと信頼できる」と感じられ、その結果、実際に共感される側がこの人は私を分かってくれている。」「この人は信頼できる」と感じるようになるためには、どうしたら良いのでしょうか?
 
やはり、「その気持ち、分かるよ」と言って、自分の意見に賛同したり、一緒に笑い、悲しみ、泣くことになるのでしょうか。
 

「その気持ち、分かるよ」の問題点

こんな場面を想像してみてください。

あなたは、今まで想像したことのない出来事に出遭い、とても苦しく辛い状況にあります。

こんなに不運で不幸なことは、他にはないのではないか。どうして自分だけこんな目に合わなければならないのか。世の中は、どうしてこんなにも不公平なのか。

そう思っています。

 

そのようなときに、「その気持ち、分かるよ」などと言われたら、あなたは、どんな気持ちがしますか?

あなたが話を始めると、聞き手から「その気持ち、本当によく分かる」と言われたとしたら、どんな気持ちがしますか?

「この人だったら、きっと私を分かってくれる」

この人は私を分かってくれている。」

と感じることができるでしょうか。

ほとんどの人は、そのように感じることはできないのではないでしょうか。

 

仮に、そのように感じることができるとしたら、おそらく「私と同じ経験をしている。」と思える人ではないでしょうか。

しかしながら、厳密な意味で「私と同じ経験をしている人」はいません。

それぞれの経験そのものが、時も違えば、場所も違います。そもそも経験する人自体が違うのですから、感じ方も違うはずです。

結局のところ、「私と同じ経験をしている人」と思えるかどうかは、ある種の思い込みにより、『共感』できたり、できなかったりすることになります。

これでは、『共感力』がどの程度あるかを計ることはできません。

 

カウンセリングにおける『共感』

多くのカウンセリングの専門家が、『共感』とは、「その気持ち、分かるよ」などと言うことや、相手の意見や感情と同じ意見や感情を自分自身も持ち、意見に賛成したり、一緒に笑ったり、一緒に悲しんだり、一緒に泣いたりすることではないと趣旨の発言をされています。

このように『共感』ではないものは何か?という点では、おおよそ共通の認識はありますが、『共感』とは何か、というと一言で説明するのは難しいようです。

 

例えば、ある心理支援職の方は、もし、不運で不幸な出来事に遭遇した人が、「悲しくて、辛いんです」と言ったら、「その悲しくて、辛い気持ち、わかるよ。私だってさ・・・。」と言うのは共感ではないと説明していました。

こちらの気持ちがどうか、私の経験がどうかではなく、「いま、悲しくて、辛いお気持ちなんですね。」とお伝えし、相手の気持ちに寄り添い、相手の気持ちを確かめるように話を聞くプロセスが共感であるという趣旨の説明をされていました。

 

また、臨床心理士であり、京都大学学生総合支援センター長の杉原保史教授は、『共感』について、次のように言っています。

共感するという作業にとって、自分の意見は関係ないのです。それが「相手のための時間」ということであり、「相手中心」ということです。

自分自身の評価や判断から離れ、それを放っておきましょう。そうして、ひたすらに相手に注意を置き続けるのです。そうのように相手に注意を置いているときに感じられるもの、それが共感です。

プロカウンセラーの共感の技術「7 自分の意見は脇に置く」より

 

共感するためには、
先入観に縛られずに相手をよく見る「観察力」
相手の立場だったらどう感じるだろうかと想像する「想像力」
自分が感じていることを表現する「表現力」が必要です。

プロカウンセラーの共感の技術「9 経験と訓練によって獲得されるもの」より

 

言葉だけの説明で『共感』を理解するのは、なかなか難しいですね。。。

きっと、杉原教授の言うように、

共感は単純な概念ではありません。

プロカウンセラーの共感の技術「1 共感とは何か」より

 

ということなんでしょうね。

そうなると実践するのは、さらに難しくなります。

だからこそ、様々な場面において、『共感』できることが重要になるのです。

 

プロカウンセラーの共感の技術

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  • 作者:杉原 保史
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*1:デジタル大辞泉/https://dictionary.goo.ne.jp/word/共感/#jn-55993

*2:極端な話、「演技力が高い」だけかもしれません。