情と理のシンセシス

SYNTHESIS OF HUMANITY & THEORY.

企業診断について

『イノベーションのジレンマ』で有名なクリステンセン教授は、企業診断について、次のよう言葉を残しています。

具合が悪くなり、医者にかかった場面を想像してみよう。

症状について説明することもなく、勝手に医者が処方箋を書き上げて「これを2錠ずつ、1日に3回服用しなさい。そしてまた来週いらっしゃい」という。

「どこが悪いのか、まだお話していないのに、これが私に効くとどうしてわかるのですか」とあなたは尋ねる。

「効くにきまってるじゃないですか。前の2人の患者には効いたのですから」と医者は答える。

 
このような医者がいたら怖いし、このような医者はそうそういないと、皆さん思いますよね。

ところが、クリステンセン教授は、学者やコンサルタントは上記のような医者と同じようなことをしており、また経営者も喜んで、「診断」なき「治療」を受けているのではないかと指摘しています。

世の中には、「診断」ができても、「治療」ができなければ意味がない、という趣旨の考え方もあるようですが、適切な「診断」ができなければ、例えある特定の病気の「治療」ができたとしても、その「治療」を行う適切な病気が分からない以上、ただひたすらに様々な病気に対して「治療」を試してみるしかありません。

「下手な鉄砲、数打ちゃ」なんとやらでは、経営資源の無駄遣いであり、とても非効率です。

また、社員には、「考えろ」と言っておきながら、コンサルタントには、「先生、どこかに成功事例はありませんか?」と聞く経営者や、「差別化が重要だ」と言いながら、部下の提案に対して「他社の成功事例はあるのか?」などと聞く経営者は、適切な「診断」をすることなく、どこかにある「治療」方法(成功パターン)をそのまま採用するといった根本的な勘違いをしています。

適切な「診断」ができることは、適切な「治療」をするための大前提です。

「治療」は上手く行ったのに、患者が死んでしまうこともあります。

患者(企業)が死んでしまっては、治療を施しても無意味になってしまいます。

そもそも「治療」が必要なのかどうかを判断するためにも、適切な「診断」は必要ですね。 

 

*1:Christensen, C.M., & Raynor,M.E. 2003. Why hard-nosed executives should care about management theory. Harvard Business Review, 81(9): 66-74.邦訳「よい経営理論、悪い経営理論」(ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー、2004年5月号)