『どうすれば成功するのか教えてほしい。』
『この問いに対して経営学者に用意されている答え方が一通りしかないということはもはや明らかであろう。すなわち、「法則はないけれども、論理はある。」という答え以外に、社会科学の一分野としての経営学は用意できるものがないのである。』
沼上幹(2000)『-経営学における意図せざる結果の探求』*1

- 作者:沼上 幹
- 発売日: 2000/03/01
- メディア: 単行本
経営や戦略は、一定の条件下であれば、いつでも、どこでも、どんな文脈においても成り立つ再現可能な一般性の高い因果関係を持つ「自然科学」ではないからです。
それでは、あるとされる「論理」*3とは、どのようなものでしょうか。
楠木健氏の「ストーリーとしての競争戦略」(2010)には、以下のような記載があります。
『論理(logic)とは、「AならばBである」というように二つ以上の思考や現象をつなぐ理由づけ(reasoning)』である。
「二つ以上の思考や現象をつなぐ」とありますので、「物事の関係性」に関するものであり、その関係性の「理由づけ」ですから、「理由になる合理的なもの」、自然法則のような法則とは言えなくとも、「法則的なもの」であることが分かります。
つまり、「論理」とは、「物事の間にある法則的(合理的)な順序、筋道、展開又は関係性」ということになります。
最後に、「理論」とは、何でしょうか。
デジタル大辞泉(小学館)によれば、
1. 個々の現象を法則的、統一的に説明できるように筋道を立てて組み立てられた知識の体系。
2. 実践に対応する純粋な論理的知識。
とあります。
「法則的」とありますので、「法則」そのものはありませんが、「統一的に説明できるように筋道を立てて」とありますので、そこには「論理」があり、それも「筋道を立てて組み立てられた知識の体系」とありますので、「論理の知識体系」であることが分かります。
つまり、「理論」とは、「個々の現象を法則的、統一的に説明できる論理的な知識体系」であり、「実践に対応するもの」ということになります。
以上から、経営には、自然法則のような「法則」はありませんが、「論理」はあり、論理の知識体系である「理論」もある、ということになります。