何故、経営者にキャリアデザインが必要なのか?
キャリアデザインというと、従業員などの雇用されて働く人が自分自身の職業人生を自ら主体的に構想し、設計すること、と思われる人が多いと思います。
しかしながら、経営者こそ、キャリアデザインが必要であり、キャリアコンサルティングを通した自己理解が必要です。
何故なら、キャリアとは、「職業を中心としつつも、人の生き方そのもの人生に関するもの」であり、雇う側か雇われる側かということは全く関係がないからです。
むしろ、キャリアコンサルティングを通した自己理解が必要なのは、経営者です。
キャリアデザインとは何か?
様々な定義がありますが、ここでは「自分の職業を含む人生そのものを自らの手で主体的に構想し、設計し、デザインすること。」とします。
最初から完璧なキャリアデザインを作ろうとする必要はありません。そのときの暫定的なキャリアデザインで構いません。
まずは作りはじめることが重要です。作りはじめると、様々な気づきがあります。その気づきを深めることが大切です。
具体的に、10年後、20年後、30年後、50年後、そして100年後*1の自分自身のキャリアデザインを描いてみましょう。
このように創業者や経営者が自分自身のキャリアデザインをすることで、自分はこうありたい、こうあるべきという想いから生じる人生観や人間観に基づいた本質的な考えがより明確になります。
「自己理解」と「経営理念」「信条」の関係
キャリアデザインをすることにより明確になった、自分はこうありたいというビジョンやこうあるべきという想いから生じる人生観や人間観は、「ビジョン」「ミッション」「バリュー」から構成される、良い「企業経営」や「信条」を作るために必要不可欠な要素です。
自己理解が深まることで生じる1つ目の効果は、次のような良い「経営理念」「信条」を策定することができるようになることです。
- 創業者や経営者のこうありたい、こうあるべきだという想いから生じる人生観や人間観に基づく根本の考えから創られていること。
- 創業者や経営者が、人生を賭けて実現したいことは何か?この会社は何のためにあるのか?今、私たちは何をすべきか?という問いに答えることができるものであること。
- 経営者を含めて、働く人々が、果たすべき使命(ミッション)と、使命を果たした先にある長期的なビジョンが分かりやすく、明確に表現され、日々の事業活動で活用されていること。
特に、大企業と比較して相対的に経営資源の少ない中小規模の企業が持続的に経営を成長させるためには、良い経営理念を創ることがとても重要です。
そして、「経営理念」や「信条」は、経営者のみならず、社員とも共有し、企業で働く人の全員が使いこなせるものでなければ、良い「経営理念」や「信条」とは言えません。
「経営理念」や「信条」を社内に浸透させ、活用できるものにするために、そのような組織へと組織を変革していくこと、すなわち、組織開発が必要です。
「自己理解」と「組織開発(組織活性化)」の関係
「組織開発」を実践する大前提として、自己理解を深めることが必要です。
「組織開発」とは、社員の全員が望む未来を創造するため、経営者も含めてみんなで学び合い、目的を達成する組織へと変革するための一連の取り組みのことです。
具体的には、以下のような組織になることです。
- 個々人がよく考え、聴き、話すことが習慣化している。
- 風通しがよく、オープンに話し合う社風・社内文化が根づいている。
- チーム及び組織において、全体最適化への取り組みが自主的・自律的に行われている
- 組織の中で目的、ビジョン、価値観とその意味が共有され、行動へと繋がっている。
- 事業環境の変化をいち早く察知し、迅速に、しなやかに適応しながらも、チーム及び組織のアイデンティティは保持されている。
- 高いチームパフォーマンスが発揮され、個々人がやりがいを感じて働いている。
このような組織になるためには、経営者自身が自己理解を深めることが不可欠です、
何故なら、適切に自己理解を深めることができると、次のような効果が生じるからです。
昔からよく、会社は社長の「器」以上に大きくならないと言われています。
企業を成長させることができる社長に必要なのは「才能」や「能力」よりも、人としての「器」です。*7
*1:「100年後は生きていない。」という方も、自分が死んで世の中に何が残るか?何を残せるのか?を考えてみましょう。ご自身が亡くなってから、何が未来に受け継がれていくのかを考えることが、100年後のキャリアデザインです。
*2:自分を受容・肯定できるようになる。
*3: 自分も良いし、人(他人)も良いと心底思えるようになる。その結果、自分が楽になる。
*4:人間関係が楽になる、良くなる。
*5:チャレンジし易い環境となり、仕事・プロジェクトが前に進むようになる。
*6:チャレンジの結果、目的・目標が達成しやすくなる。
*7:もちろん、「才能」や「能力」が不要なわけではありません。しかし、「才能」や「能力」に固執するあまり、人としての「器」が小さくなり、会社というチームが学習しない、成長しない組織になってしまってはいないでしょうか?